ムジーク

勝手気ままに綴る音楽ブログ

Best Albums of Japan 2019

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遅ればせながら、弊ブログを運営する2人が選出した2019年の邦楽ベストアルバムを発表いたします。完全に個人的な好みに準拠していますが、それがイコール『ムジーク』の色だと考えていただければと思います。

 

以下、それぞれコメントをつけました。全25枚です。

 

平成が終わり、テン年代も終わり、いよいよ新時代へと突入した感触があります。2020年はどんな音楽に出会えるのでしょうか。

 

そんな期待も込めつつ。今年も、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

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indigo la End - 濡れゆく私小説

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主人公はいつも幸せになれない。主人公はいつも涙を流している。感傷的な失恋ソングにも何故だか愛着が湧く。

(miku)

 

 

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・AAAMYYY - BODY

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モダンかつコンテンポリーな雰囲気のサウンドと退廃的な歌詞のアンバランスな組み合わせがクセになる一枚。聴き終えた後、どこか違う世界にタイムスリップしたような感覚になる。

(miku)

 

 

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・江沼郁弥 - それは流線型

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「毒を吐く」と言うよりは、必死に「解毒」しているのかもしれない。抗いながら、やがて研ぎ澄まされて流線型になり、鋭く風を切って進む日を想う。そんな切実な歌。

(taku)

 

 

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・ENDRECHERI - NARALIEN

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喜びも悲しみも全てファンクに昇華されていく。『NARALIEN』を通してあなたも堂本剛流の宇宙へと誘われてみませんか。

(miku)

 

 

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小袋成彬 - Piercing

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ピアスを開けるように、ささやかでも確実な意志を持って、新しい時代への風穴を開ける。新しい時代への祈りのような作品。

(taku)

 

 

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・KIRINJI - cherish

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令和の職人集団キリンジの作った至高の一枚。ユニークでユーモア溢れる楽曲群に心のトキメキが止まらない。

(miku)

 

 

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サカナクション - 834.194

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原点と現在地。その狭間を泳ぎ続けてきた彼らが出した答えは、「この海に居たい」と願うことだった。旅はまだまだ続く。

(taku)

 

 

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Spangle call Lilli Line - Dreams Never End

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イアン・カーティスが遺した音楽が今も愛されるように、この先も終わりなく誰かの中で鳴り響くであろう音楽が、確かに存在している。そっと身に染み込むように、自由で自然。

(taku)

 

 

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スピッツ - 見っけ

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ロック大陸の物語の先へ。この世界はまだまだ「見っけ」で溢れている。そんな希望に満ちた音と言葉たち。

(taku)

 

 

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・SPOOL - SPOOL

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憂鬱と退屈、輝きと透明感。相反する事象が綺麗に相まって美しくメロウな楽曲に変貌している。今、最も注目すべきガールズバンドの「序章」のようなアルバム。

(miku)

 

 

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・Tempalay - 21世紀より愛をこめて

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平成の終わりに相応しい作品。心地良さ、不気味さ、新しさ、懐かしさがごちゃ混ぜになって、オモチャ箱みたいだった。

(miku)

 

 

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・TAWINGS - TAWINGS

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飄々としているように見えて、実は虎視眈々と獲物を狙っているのかもしれない。ゴチャゴチャな時代を一掃する爽快なカウンター。

(taku) 

 

 

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土岐麻子 - PASSION BLUE

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東京という都市に潜む"孤独"を感じさせる、憂いを帯びたシティポップ。思わず口ずさみたくなるキャッチーなサウンドが脳裏から離れない。

(miku)

 

 

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・ナツノムジナ - Temporary Reality Numbers

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吸い込まれそうな青空と海辺の狭間で、ふと頬を撫でる潮風のように、彼らの音楽は優しく、懐かしく、そしてどこか切ない。

(taku)

 

 

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・nuance - botän

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軽やかに、それでいて強かに。離れてしまいそうなものをボタンで留めるように。彼女たちは、それが「愛」だということを知っている。推すなら今!

(taku)

 

 

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THE NOVEMBERS - ANGELS

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NEO TOKYOのための賛美歌。人類が使徒に立ち向かう準備は整った。

(taku)

 

 

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・BBHF - Family

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身近にあるものを「家族」と呼んでみる。小さくなった車から降りて新たに歩み始めた彼らの、そんなオープンでポジティブなメッセージたち。

(taku)

 

 

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・羊文学 - きらめき

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通底する陰りや憂い、それらとコントラストを成すように放たれる「きらめき」たち。それは彼女たちのアイデンティティと僕らのマインドが共振することで、より強固になっていくのだろう。

(taku)

 

 

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・FINAL SPANK HAPPY - mint exorcist

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官能的なムードと大人の悪ふざけ。一転してダウナーな側面も。「メンヘラへのカウンター」などという形容では収まらないほど、実は普遍的でシンプルに「良い音楽」を体現している。

(taku)

 

 

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フィロソフィーのダンス - エクセルシオール

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真っ赤なフェラーリに乗ってどこまでも。あなたの街にやってきて、彼女たちは踊る。

(taku)

 

 

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・Black Boboi - Agate

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無機質かつスタイリッシュ、誰にも媚びず分類にとらわれない音楽。聴けば聴くほどに飲み込まれていく。

(miku)

 

 

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Base Ball Bear - Grape

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まるで葡萄の粒のように、少し力を入れれば途端に潰れてしまうような、そんな感情の微妙な部分をギターとドラムとベースだけで描き切った新たな出発点。

(taku)

 

 

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・MINAKEKKE - OBLIVION

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忘れるために、暗闇で踊る。その儚くも美しい姿に魅せられる。

(taku)

 

 

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Maison book girl - 海と宇宙の子供たち

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彼女たちがこれまで表現してきた「喪失」は、何かを手に入れるためのステップに過ぎなかった。不可触で神秘的な世界へのゲートがここに。

(taku)

 

 

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LUNA SEA - CROSS

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過去のLUNA SEAらしさと現在のLUNA SEAらしさが同居するアルバム。溢れ出る光の粒が眼に浮かぶような壮大なサウンドが愛おしい。

(miku)

 

 

僕は本当にフジファブリックのファンなのだろうか

 

2019年が自分にとって特別である理由は様々あるのだが、やはりあの人の死を想わずにはいられなかった。

 

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志村正彦。2009年12月24日に亡くなってから、今年でちょうど10年が経つ。

 

かつて野球少年だった彼は、中学生の時に奥田民生のライブを観て音楽を志した。2000年にフジファブリックを結成し、フロントマンとしてヴォーカル/ギターを担当。インディーズとメジャーを含め、生前に4枚のフルアルバムを世に送り出した。

 

29歳でこの世を去った志村正彦。あまりにも若く、そして突然だった。

 

 

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10年前、高校2年生の夏頃だっただろうか。クラスメイトがフジファブリックを聴いていたのをきっかけに、僕はTSUTAYAで『FAB FOX』と『TEENAGER』を借りた。そのヘタウマで味のある歌唱とひねくれた不思議なアレンジの虜になるまで、それほど時間はかからなかった。続けて他のアルバムも借りて、当時は『CHRONICLE』に収録された"Sugar!!"が好きでよく聴いていたのを覚えている。

 

 

こうして、僕のどす黒い青春時代を彩る存在となったフジファブリック。登下校時はもちろん、家でも毎日のように愛聴するほど大切なバンドとなっていた。

 

それから数ヶ月。とある日の放課後、志村正彦が亡くなったことを人伝に聞いた。それが亡くなった当日だったのか数日経った後だったのか今となっては定かではない。ショックのあまり記憶が曖昧なのかもしれない。まさしく青天の霹靂だった。

 

その後、フジファブリック志村正彦以外の3人で活動を再開。2010年、志村の生前に録りためた楽曲を仕上げて収録した『MUSIC』をリリースした。再生ボタンを押して耳に飛び込んでくるあの歌声を聴いた瞬間、こう思った。

 

 「なんだ、生きてるじゃないか。」

 

 

この時点で、僕の中のフジファブリックは「永遠」に止まった。その後リリースされた『STAR』も聴いてみたものの、やはりどこか腑に落ちず、僕は志村正彦が遺した楽曲たちだけをひたすら反芻するようになってしまったのだ。

 

 

* * *

 

 

僕は本当にフジファブリックのファンなのだろうか。

 

そんな気持ちを、この10年近くずっと抱えながら生きてきたように思う。志村正彦の存在を思い出すたびに、どこか宙に浮いたような心地がするのだ。そして、彼の遺志を継いで活動する今のフジファブリックを素直に好きになれない自分に対し、どうしようもなく嫌悪感を抱いてしまう。ずっと、この繰り返しなのだ。

 

志村正彦は、こんな僕をどう思うだろうか。僕は間違っているのだろうか。いまだに着地点が見えなくて困る。

 

あれから10年。あっという間だった。これほどまでに彼のいない世界が空虚だとは思わなかった。寂しい。ただのファンにすぎない僕でさえ、そう思う。彼の功績の大きさを実感し続ける10年間が矢のように過ぎた。

 

フジファブリックは今年のROCK IN JAPAN FESTIVALに出演していた。ステージ間の移動中に、ふと耳に入ってきたあのイントロ。"若者のすべて"だった。

 

「最後の花火に今年もなったな」

 

あの名曲の名フレーズだ。しかし、10年前のあの日から、最後の花火はまだ一度も上がっていない。

 

 

(taku / おすしたべいこ)

 

 

Perfumeのっちに人生を狂わされ、ボブヘア教に入信した人間がおれだ

 

Perfumeがメジャーデビューして15年経つらしい。結成に至っては、なんと20周年。彼女たちが現在30〜31歳ということを考えれば、人生の半分以上をPerfumeに費やし、活動していることになる。

 

すごくね?????

 

"ポリリズム"がリリースされたのは2007年。ああもうそんなに経つのか…。アイドルとしてスタートした彼女たちが、テクノポップをお茶の間に届くJ-POPとして広めた功績は計り知れない。

 

と、ここでふと思った。僕はのっちがめちゃくちゃ好きだ。

 

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いや、別にふと思ったとかそういう話ではないかもしれないが、僕はPerfumeを聴き始めた中学生の頃からずっとのっちが好きだった。そして、振り返ってみるとこれまで僕はのっちを起点にボブ女子に強く惹かれ続けていることに気づいてしまった。そう、僕は知らぬ間に「ボブヘア教」に入信してしまっていたのである…!

 

マジで何言ってんだコイツみたいな視線を向けるんじゃないよ。

 

そもそもボブヘアの何が良いのか?―それはやはり、そのシルエットの良さではないだろうか。

 

頭の頂点から首元に至るまでの曲線。その膨らみのあるシルエットは極めて女性的だ。最近では外ハネボブなんかも流行っているが、個人的には丸みを帯びた内巻きボブのラインに惹かれることが多い。

 

そんなこんなで、今回はのっちをはじめとした、これまで僕が推してきたボブ女子遍歴を紹介していこうと思う。僕のボブヘア教徒としての歩みを皆さんに見ていただきたい。マジで需要あるのか?

 

 

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のっち(Perfume

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ご存じ、Perfumeという名の三角形の頂点の一つを担う存在、不動の黒髪ボブ、のっち。顔面の良さ、抜群のプロポーション、そしてワンレンボブヘア…完璧である。非の打ち所がないことが非の打ち所なのではないか、と思うくらいだ。

 

Perfumeの存在をしっかり認識したのは"ポリリズム"が流行りだした頃だった。当時母親が「テクノって昔流行ってたんだよね~、時代は繰り返すんだね」などと言っていたことが、今でもなぜか鮮明に覚えている。「昔流行ってたテクノ」というのは、今思えばおそらくYMOあたりを指していたのだろうと思う。

 

 

最初の頃はPerfumeのビジュアルにさほど興味はなく曲も熱心に聴いていたわけではなかったが、『GAME』がリリースされた際、あれは確かレンタルしてきたものだが、ブックレットを見た僕に衝撃が走る。

 

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―「アカン。」

 

僕は札幌出身だが、ナチュラルに関西弁になるくらい、これは「アカン」写真だった。

 

丸みを帯びた黒髪ショートボブ、身体のラインにフィットしたタイトな衣装、そこから伸びるスラッとした脚。この時からのっちが世界の「全」であると同時に「一」となったのである。程なくして『GAME』は僕の愛聴盤となったことは言うまでもない。

 

のっちが絶対的な美の「イデア」となったことで、僕は「ボブ狂い」となってしまう。好きな髪型を訊かれれば、馬鹿の一つ覚えのように「ボブ」と答えた。そして、とにかくボブヘアの芸能人を探した。しかし、長い間のっちに匹敵するようなボブ女子は現れなかった。

 

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△高校生当時、好きな曲ばかり集めたプレイリストをCD-Rに焼き、ジャケットは何故かこの画像を印刷して使っていたというどうでもいい思い出。しかもそれにつけたタイトルが『NOCCHi OR DIE』だったからどうかしてる。本当にどうでもいいな。

 

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△『GAME』時の3人のビジュアル。今見ても素晴らしいデザインの衣装。

 

 

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夢眠ねむ(ex. でんぱ組.inc

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長らくのっちが「不動のボブヘア」の座に君臨し続けていたが、突如革命が起こった。とは言えのっちの座が奪われたわけではなく、彼女と対を成し、同じ玉座の間に収まる存在が現れた。そう、夢眠ねむ(ゆめみねむ、愛称は「ねむきゅん」)である。

 

初めてねむきゅんを観たのは"サクラあっぱれーしょん"のMVだった。情報量の多さに目がチカチカしたが、その圧倒的な多幸感がいつしか僕の人生の糧となることを、当時はまだ知る由もなかった。

 

 

そして、ボブヘアのメンバーがいることを知る。歌声のかわいさに惹かれ、やがて彼女の活動を追うようになった。

 

アキバを経由したサブカルチャー・アイドルの頂点にして、多摩美術大学を卒業し芸術分野への才能も遺憾無く発揮、自身の担当カラーであるミントグリーンを世間に浸透させ新たなスタンダードにまで押し上げ、前下がりボブ(通称カッティングエッジネムキュンカット)で時代に切り込んだ文化人…。彼女の存在は、僕の中にあった「アイドル像」をとことん裏切り、固定観念は大きな音を立てて崩れた。まさにパラダイム・シフトである。

 

なお、ねむきゅんは惜しまれながらも2019年3月末をもってアイドルおよび芸能界を引退。現在はマスコット・キャラクター「たぬきゅん」のプロデュースと、下北沢にて「夢眠書店」を開業し活動している。いつか行ってみたい…。

 

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△ねむきゅんが無類の小沢健二ファンであることはご存じだろうか。写真にもあるようにフリッパーズ・ギターの『ヘッド博士の世界塔』をフェイバリットに挙げていたりもする。なお、でんぱ組は過去にオザケンの"強い気持ち・強い愛"をカバーしている。

 

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△「推しmeets推し」が実現してしまった恐ろしい瞬間。「尊い」という感情の正体、推しの「イデア」がそこには存在していた。当時「こんなことがあっていいのか?!?!」と耳から血を流しながら叫び、画像を何度も何度も見返しては思索に耽り、挙句の果てには咽び泣き、拝み倒したものだった。は?

 

 

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矢川葵(Maison book girl

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もうボブの推しは現れないと思っていた。ゆえに、矢川葵との出会いはまさに青天の霹靂だったと言える。

 

Maison book girl(以下ブクガ)を初めて聴いたのはサブスクリプションであり、メンバーのビジュアルはそれほどはっきり把握していなかった。現代音楽をポップミュージックに昇華したサウンドに乗せて女の子たちが歌う。その新鮮かつ衝撃的な出会いにとてつもなく感動した。ビジュアルより先に楽曲に惹かれてアイドルを好きになったのは、これが初めてだったように思う(以後、この傾向はさらに加速していく)。

 

が、しかし、僕は気づいてしまった。ブクガにボブの子がいるだと…? そして"faithlessness"のMVを観てみる。「は? めちゃくちゃ好きだな」となる。ありがとうございます! 今一番好きなアイドルは誰かと訊かれたら、僕は迷わず「矢川葵」の3文字を口にするだろう。

 

 

矢川葵がセンター的ポジションとしてフィーチャーされたこの作品を、僕はいまだにブクガの全レパートリーの中で一番好きだし、これが覆ることはそう簡単にはないだろうと思っている。ラストの操り人形が崩れ落ちるような振り付けも素晴らしい。

 

ここで僕はターニングポイントを迎えた。そう、好きになるきっかけこそは髪型だったが、推し続ける理由は単純に「顔が好き」という部分が大きい(もちろん顔以外も全部好きなのだが)(もちろん顔以外も全部好きなのだが じゃないんだよ)。現に矢川葵の髪型は黒髪ボブからショートヘアになったり最近では茶髪になったり、割と変化がある。僕はこの時点でボブヘア教徒ではなくなった。

 

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△葵ちゃんといちご!!! かわいいねえ〜。


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△葵ちゃんのチャイナドレス姿+パンダの被りもの!!! 激かわいい状態だねえ~。

 

Maison book girl関連の記事はこちらから。

 

 

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間宮まに(ヤなことそっとミュート)

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「高身長+ボブヘア」―という、夢眠ねむの路線を正統に受け継ぐかのような存在が現れた(そう思ってるのが僕だけだとしても、だ)。ヤなことそっとミュートより、間宮まに。彼女との出会いは2度目の青天の霹靂だった。

 

…いや、ちょっと待て。結局ボブの子を好きになってるやないかい。ボブヘア教の呪縛はそう簡単に解かれるものではなかった。何言ってんだマジで。

 

ここで必死に弁明(?)をしてみる。僕が彼女を推す理由は髪型よりも、その人懐っこさにある。好きになった順番は矢川葵よりも後だが、実は人生で初めて一緒にチェキを撮ったのが間宮まにだった。彼女は、僕が初めてのチェキで緊張しているにも関わらず超がつくほどフランクに接してくれた。フランクというか、頼んでもいないのにボディタッチや手を握るなどしてくる神対応っぷりで変な汗が止まらない。僕はクソキモ笑顔でヘラヘラするしかなかった。そして、この時の僕はまだ知らなかった。チェキの沼が、とても深いということを…。

 

それはさておき、華奢な身体とは裏腹に激しい曲も歌いこなすポテンシャルの高さには脱帽するばかりだ。マスロック調もなんのそのである。

 

 

ツイートのユーモアが、彼女の人気の要因であることも忘れてはならない。インターネットに強いアイドルはオタクにウケる。間宮まにはめちゃくちゃ「オタクホイホイ」だ(かく言う自分もまんまと釣られたことは、言うまでもない)。

 

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△彼女の音楽的趣味は、実は僕と近いのではないかと勘ぐっている。この写真ではTempalayのTシャツを着ている。

 

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△こちらでは、なんとSuperorganism!!!

 

 

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早桜ニコ(クマリデパート)

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ekomsはいいぞ!!!ということで、ブクガの後輩にあたるクマリデパートのボブっ子にしてリーダーである早桜ニコ(さおにこ)。愛称は「さおてゃん」。

 

ekomsと言えば一筋縄ではいかないアイドルが所属しているイメージだが、クマリデパートはその中でも「王道アイドル」を志向している。サクライケンタをはじめ、大森靖子や玉屋2060%が携わっているにも関わらずしっかりと「正統派」的なポジションを確立しているのは、なかなか稀有な事象のような気がしないでもない。

 

 

いや〜、それにしてもさおてゃんマジでかわいいな。この子の最大の魅力は天性の笑顔だと思う。ライブ中も、握手会やチェキ会中も、とにかくはじけるように笑っている。「笑顔が人を元気にする」を、まさに体現していると言っていい。アイドルになるために生まれてきたかのような子だ。クマリデパートには、さおてゃんの求心力が絶対的に必要だし、王道路線の確立には彼女の存在が果たした役割も大きいに違いない。

 

とは言え、その笑顔の裏には様々な苦労があるのも事実だろう。アイドルという職業は華があるが、陰の努力は並々ならぬものに違いない。さおてゃんはそれらをピカピカの笑顔に隠している。僕は今泣きそうだ。

 

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△意図せずスカートの澤部氏と共演。

 

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△かわいいの暴力。勘弁してくれ。

 

△クマリデパートについても過去に色々書いているのでこちらも是非。

 

 

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いかがだっただろうか。特にオチらしいオチもないが、こうして振り返ると、やはりのっちの存在は絶対的だったと思わされるばかりだ。「ボブ女子」というカテゴリーは、今でも自分の中に確かな「指標」として存在していることを再確認した。ボブヘア教から完全に足を洗うまでは、まだまだ時間がかかりそうだ。

 

のっちとの出会いがなければ、僕は今こうしてアイドルについて語ることもなかったかもしれない。そんな人生の妙を感じながら、この記事を締め括りたい。

 

本当に、どこに需要があるんだ。

 

 

(taku / おすしたべいこ)

 

 

乱暴なリハビリの先に - Syrup16g「SCAM:SPAM」

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2019/10/04 SCAM <詐欺>

 

初めて恵比寿駅で下車した。金曜日の夜の人波に抗いながらエスカレーターを登り、空中回廊をひたすら進んでいく。やがて、これから観ることになるバンドとは真逆の雰囲気を醸し出す広々とした庭園のような場所に、僕は辿り着いていた。

 

会場の入り口に近づいていくと、黒い人たちがゴチャゴチャと入場を開始していた。これを正常な光景だと思うならば、おそらく感覚が麻痺しているだろう。中へ入り奥へ進んでいくと、天井の高い体育館のような空間に出た。黒い人たちがステージに置かれたギター、ベース、ドラムを見つめながら立っている。最前列では「撮影禁止」の旨が書かれた看板が病気のように何度も往復し、スピーカーからはひたすらJoy Divisionの名曲たちが流れ続けていた。手に変な汗をかく。

 

開演時間から5分ほど押して、照明が暗転した。黒い人たちがステージに向かってどっと押し寄せる。"virgin suicide"が流れ出す。下手から、中畑大樹キタダマキ、そして五十嵐隆が登場した。紛れもない、Syrup16gだ。

 

約1年半ぶりの「復活」となったこの日に披露されたのは、2008年の解散以前の楽曲だった。五十嵐は1曲目の"天才"のイントロからギターを間違えたり、中畑に「そもそも人前に出るのが(久しぶり)…」と揶揄されたり、もうベテランなのにMCで「緊張する! あー!」と叫んだり散々な様子だが、僕には全てが許せた。いや、許すとかそういうことではなく、こんな大事な夜に「詐欺」なんてタイトルをつけてしまうことも含めて、愛おしいと思った。

 

"神のカルマ"のイントロのドラムが響き渡りそこにベースの単音が加わり最後にギターが鳴らされるあの瞬間に僕の視界は涙でぼやけ、しばらくは目の前で繰り広げられている光景に自分の感情が全く追いつかなかった。"回送"、"ex. 人間"、"イマジン"、"テイレベル"…まさに「あれもこれも」状態で、とても正気ではいられなかった。

 

あっという間だった。本編最後の"scene through"で僕はようやく自分を取り戻していた。解散前のラストアルバムに収録されたこの曲を最後に披露することは、とても意義のあることだ。

 

途中、MCで五十嵐が「(このギター)ヤフオクで15,000円で買ったんですよ」と衝撃の告白をし、会場をどよめかせる場面があった。にわかには信じ難い事実だった。安いギターが必ずしも駄目だということはないし、そのギターはどうやらしっかりと手入れされたものらしいが、やはりインパクトは絶大だった。そしてこのことは、どんなギターでも五十嵐が弾けばたちまち「シロップの音」になるということの証明でもあったのだ。

 

熱気に満ちた会場の大きな拍手に応えるように、アンコールは2回行われた。最後の最後に披露された"根ぐされ"で、どれほどのシロップファンが救われただろうか。音楽を安易に「救い」だと表現することは、もしかしたら危険なのかもしれないが、シロップの音楽は確実にその作用が強いのは紛れもない事実だろう。

 

五十嵐隆という、いつまでも「不安定」で「絶対的」な男を鉄壁のリズム隊が支えることで、「Syrup16g」というバンドは成り立っている。基本的に無骨な表情だが時折笑顔を見せながら五十嵐を見守るようにテクニカルなベースを弾き倒すキタダマキ、百戦錬磨を思わせる爆発力と安定感で強靭なビートを作り出す中畑大樹、そして首を筋張らせながら絞り出すように歌い、歯を食いしばりながらギターをかき鳴らす五十嵐隆。この夜、シロップはその求心力(あるいは救心力か)をさらに強めた、と言っていいだろう。僕はその目撃者となれたことを、誇りに思う。

 

 

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2019/10/05 SPAM <迷惑>

 

昨夜に続いて「迷惑」と銘打たれたこの日は、再結成後の楽曲が披露された。おそらく、大方のファンが解散前の楽曲をライブで観たいと思っていると予想した上でのこのタイトルだろう。しかしこれが、迷惑であるはずがない。

 

五十嵐自身も昨夜よりは調子を取り戻しているように見えた。"生きているよりマシさ"、"赤いカラス"、"冷たい掌"、"Murder You Know"(五十嵐曰く「めっちゃ好き! 地味!」)、"宇宙遊泳"など、次々と披露される再結成後の楽曲を浴びていくうちに、Syrup16gがしっかりと「現在進行形のバンド」であることを改めて実感した。この特別な夜に披露しているからには、当然五十嵐が特に気に入っている楽曲たちだろう。五十嵐はMCで再結成後の楽曲ばかりのセットリストを謝っていたが、その必要は全くなかった。過去の作品に縛られることなく現在も充実した活動ができているということが、僕にはとても嬉しかったし、同じ気持ちだったファンも少なくないと思う。

 

そして、アンコール(この日も2回あった)。いきなり"イエロウ"から始まり、怒涛の勢いで解散前のキラーチューンたちが披露された。完全にサービスタイムである。「もうちょっとやろう(中畑)」という言葉に歓喜する会場。"生活"、"落堕"、"空をなくす"、"真空"など、この日のために取っておいたと言わんばかりのラインナップだった。

 

Syrup16gが2日間やり切った。両手を合わせながらステージを後にする五十嵐隆の姿が忘れられない。

 

五十嵐隆は1日目のMCで今回のライブを「乱暴なリハビリ」と形容していた。そして、それにファンを付き合わせてしまったことを謝ってもいた。しかし、僕らはそれをある意味望んで観に来ていた。「Syrup16gが存在し、ライブをやってくれる」という事実が、僕らを勇気づけた。リハビリでも何でも来いだ。

 

両日共にソールドアウトとなった今回のライブ。それに伴い、来年の追加公演も決定している。新旧織り交ぜながら、新曲もやるかもしれないとのことだ。次なるリリース情報を楽しみにしつつ、彼らがこの先も充実した音楽活動ができることを、切に願ってやまない。

 

 

(taku / おすしたべいこ)

 

  

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 Syrup16g「SCAM:SPAM」@恵比寿ザ・ガーデンホール 2019/10/04 05

 

<SCAM>

SE:virgin suicide
1. 天才
2. ソドシラソ
3. 神のカルマ
4. Sonic Disorder
5. Heaven
6. Honolulu★Rock
7. 回送
8. ex. 人間
9. イマジン
10. テイレベル
11. ハミングバード
12. scene through

En1
13. (I'm not) by you
14. 変態
15. パープルムカデ
16. リアル

En2
17. 根ぐされ
 

SPAM

SE:virgin suicide
1. 生きているよりマシさ
2. 赤いカラス
3. ゆびきりをしたのは
4. Stop Brain
5. Find the answer
6. Star Slave
7. 冷たい掌
8. Share the light
9. vampire's store
10. Murder You Know
11. 変拍子
12. 宇宙遊泳

En1
13. イエロウ
14. 生活
15. 落堕

En2
16. 翌日
17. coup d'Etat
18. 真空

 

【1曲レビュー】Luby Sparks "Somewhere"

 

Luby Sparksが約1年ぶりのシングル『Somewhere』をリリースした。 

 

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『Somewhere』ジャケット

 

2018年1月、『Luby Sparks』でデビューを飾った彼ら。スーパーカーの『スリーアウトチェンジ』を「意図的」になぞるような青くドリーミーなシューゲイズサウンドを聴かせたそのアルバムは、YuckMax Bloomと共に全編ロンドンで制作されたことでも話題となっていた。自分にとっても、2018年を代表するポップアルバムとして今なお鮮烈な輝きを放ち続けている。

 

 

同じ年の11月にはEP作品『(I'm) Lost in Sadness』をリリース。前作のポップな路線から一転、4ADの系譜を継ぐ耽美派に傾倒。タイトルからして直球の"Cherry Red Dress"など、音楽ファンを唸らせたのも記憶に新しいだろう。

 

 

そして2019年9月。ミックスにはお馴染みのMax Bloom、マスタリングにはJosh Bonati(Beach FossilsやWild Nothingなどを手がけるエンジニア)を迎えて制作されたシングル『Somewhere』をリリース。4AD路線を踏襲し、80年代のゴシックでドリーミーなサウンドを「今」の感覚で鳴らしたポップな1曲となっている。

 

 

今回最も特筆すべきなのは、ギターのサウンドメイキングだろう。なんと、90〜97年にCocteau Twinsのギタリスト/エンジニアとして活躍し、ソロプロジェクト・FLat7としても音源をリリースしているTate Mitsuoがプロデュースしているのだ。90年代当時のエフェクターなどの機材を使用することで、まさしく「4AD的」なサウンドを作り出すことに成功している。

 

 

そのCocteau Twins直系とも言える耽美なギターサウンドが2019年に蘇っている様は、時代を超え、まさしくリスナーを「どこか(somewhere)」へいざなうかのようだ。そしてその「どこか」というのは、天国か、あるいはラスベガスか。

 

MVでは、そのサウンドとシンクロするようなレトロな質感と煌びやかな光が眩しい。エリカ・マーフィー(Vo.)の絶対的な存在感や5人のファッションなど、バンドの美学をしっかりと可視化している。

 

 

また、今回のジャケットはロンドンのシューゲイズポップバンド・The History of Apple Pie『Out of View』へのオマージュとなっている点も見逃せない。

 

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The History of Apple Pie『Out of View』ジャケット

 

Natsuki Kato(Vo. Ba.)曰く、The History〜のドラマーがYuckのサポートとして参加した際に本人に会ったことがあり、「音も見た目も僕のバンドに似ている」と言われて以来意識するようになったらしく、今回のジャケットのデザインに至ったようだ。

 

個人的に、音楽における「オマージュ」というものに対して非常に弱い。それが、好きな音楽どうしが繋がる瞬間であれば、尚更である。ジャケットもそうだが、サウンドにしても先人たちのエッセンスがふんだんに盛り込まれており、そこには「愛」しかない。こういうものには滅法弱いのだ。

 

ジャケットにしても、サウンド(あるいはスタンス、アティチュードとも言えるか)にしても、好きなものや影響源への敬意を払い、ただの模倣では終わらせずに完全に「自分たちのもの」にしている点が、やはり彼らの恐るべきところだ。その咀嚼力の高さというか、バランス感覚というか、センスの良さというか。デビュー以来それらにますます磨きがかかっている。懐かしいようで、新しい。まさしく「今」の音だ。

 

今後リリースされるであろう2ndアルバムが楽しみで仕方がない。一体どんな顔を見せてくれるのか、存分に待ちわびたいと思う。

 

 

(taku / おすしたべいこ)

 

 

Base Ball Bear・日比谷ノンフィクションⅧと記憶の旅

 

話は10年前まで遡る。

 

僕がBase Ball Bearのライブを初めて観たのは2009年9月12日。ラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!!』主催のライブイベント「YOUNG FLAG 09」の札幌公演に、ベボベは出演していた。

 

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同じ年の春頃に"神々LOOKS YOU"を聴いてすっかりベボベにお熱だった僕は、そのイベントの抽選にダメ元で応募してみたところ、あっさり当選。なんと無料でライブを観られることになった。当時の僕は高校2年生、ベボベを観るのが初めてであるのと同時に、そもそもライブを観に行くこと自体が人生で初めての体験だった。

 

正直、ライブの内容はほとんど覚えていない。対バンしていたサカナクションの"ライトダンス"だけはやたら鮮明に記憶に残っているが、肝心なベボベの記憶は長い年月を経てすっかり消し飛んでしまった。しかし、よっぽど良かったのだろう、家に帰りイベントでもらったフライヤーを眺めていると、ベボベが札幌でワンマンライブを行うことを知り、僕は迷わず応募、無事にチケットを獲得したのだった。

 

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2009年10月31日、Base Ball Bear「Zeppyramid tour」札幌公演(Zepp Sapporo)。ライブは最高だった。いや、正確に言えばライブの内容はまたしても覚えていないが、大好きなバンドの大好きな楽曲たちが目の前で演奏されていることにとてつもなく感動したことだけは覚えている。この時、僕はBase Ball Bearというバンドをずっと信じていこうと、そう思った。

 

それから、いつの間にか10年が経っていた。金銭的な理由やタイミングの問題などでそれほど多くベボベのライブに行けないまま、湯浅将平が脱退してしまった。彼の華麗なギタープレイをもっと目に焼き付けておけば良かったという後悔だけはどうしても拭いきれない。かつてサポートメンバーを迎え4人体制で行われたライブを一度だけ観に行ったことがあるが、僕はどうしてもそこにいるはずの湯浅将平の影を追いかけてしまい、やり場のないモヤモヤだけが残っていた。

 

 

* * *

 

 

2019年9月15日。僕は日比谷公園の長蛇の列に並んでいた。Base Ball Bear「Guitar! Drum! Bass! Tour 日比谷ノンフィクションVIII」、念願の初・日比谷ノンフィクションだった。思えばこのシリーズライブはちょうど10年前から始まっており、つまり10年越しの願いが叶ったことになった。

 

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日比谷野外大音楽堂自体は、2016年のきのこ帝国のライブ以来、僕にとって実に3年ぶり2回目に足を踏み入れる場所。物販を求める長蛇の列は約3時間も続いたが、その間会場からはリハーサルの音がこれでもかというくらい漏れ出しており、否応なくテンションが上がった。

 

テンションが上がった、というのはつまり、かつて抱いたモヤモヤが払拭されていることに他ならなかった。聴こえてくる音すべてがかっこいい。かっこいいというシンプルな感想が僕を支配した。そこに「ひとり足りない」というような雑念は一切なかった。このライブは間違いなく過去最高だろうという確信が、この時点で既にあった。

 

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* * *

 

 

僕はどうしようもなくBase Ball Bearが好きだと思った。

 

最新EP『ポラリス』『Grape』の2枚から全曲と、これまで発表したアルバムからほぼ1曲ずつ披露するセットリストは、僕を否応なしに青春時代に引き戻した。この感覚だ、僕が10年前に札幌で感じていた高揚感は、これだった。

 

ステージを観る。サポートメンバーもゲストもいない、完全に三人のステージ。下手側にはギターをかき鳴らし歌い上げる小出祐介、上手側にはベースを弾き倒す関根史織、そして後方中央にはどっしりと構えて安定感のあるドラムで魅せる堀之内大介。その3人を結んで出来上がる三角形は、他のどの三角形よりも美しい。

 

湯浅将平はもういない。しかし、その危機を乗り越えた強さが、確かに音に宿っていた。そして、4人時代の楽曲を3人用にリアレンジし、何の違和感もなく飄々と披露していた。「Guitar! Drum! Bass! Tour」というタイトルにもスリーピースバンドとしての矜持が如実に現れているように、まさに今のベボベの最高到達点を可視化するライブ。かっこいい。思わず目頭が熱くなる瞬間が何度もあった。笑いを誘うMCも相変わらずだ。

 

中盤、ステージ後方の垂れ幕が落ち、電飾が施されたふたつの電波塔が現れる場面があった。ひとつは通常の電波塔、そしてもうひとつは『Grape』のジャケットにも見られる逆転した電波塔だった。この演出は、本当に憎い。

 

あの夜、僕はティーンエイジャーだった。いや、正確に言うなら、Base Ball Bearに対して抱いてきた全ての喜怒哀楽が全身を駆け巡り、僕は10年前の自分と対話していた。 そして、僕は16歳の自分と共にBase Ball Bearを観ていた。「ロックはティーンエイジャーのものである」という、ある種のイデオロギーが、そうさせていた。

 

Base Ball Bearにはロックバンドのすべてが詰まっている、ということを実感した。かっこよさ、シリアスさ、メッセージ性、批判精神、美学、爆発力、そして楽しさ。そのすべてが、たまらなく愛おしい。10年前と比べるとバンドを取り巻く環境も自分の置かれた状況も全く違うけれど、今までベボベを信じ続けてきたことは間違いではなかった。心からそう思えたことが、とても嬉しかった。僕の中のモヤモヤは完全に消え失せた。

 

アンコールでは「リリース情報」と題して、堀之内大介の結婚と出産(「息子をリリースしました!」と宣言していた)をサプライズ発表。あの多幸感は一生忘れない。そして去り際、小出祐介が「ロックバンドって、本当にいいものですね」と半ば冗談のような口ぶりで言っていたが、そのシンプルな一言こそが、あの夜のすべてのような気がする。

 

ステージ後方でキラキラと光るふたつの電波塔。あれは、僕にとっての大きな道標となるだろう。これからもBase Ball Bearを信じていこうと思う。

 

 

(taku / おすしたべいこ)

 

 

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Base Ball Bear「Guitar! Drum! Bass! Tour 日比谷ノンフィクションVIII」@日比谷野外大音楽堂 2019/09/15

1. 試される
2. Stairway Generation
3. いまは僕の目を見て
4. 彼氏彼女の関係
5.「それって、for 誰?」part.1
6. ポラリス
7. Flame
8. Summer Melt
9. ダビングデイズ
10. PARK
11. changes
12. 十字架You and I
13. Grape Juice
14. LOVE MATHEMATICS
15. CRAZY FOR YOUの季節
16. セプテンバー・ステップス

En
17.  The End
18. ドラマチック

 

 

△『Grape』のレビュー記事もよろしければどうぞ。

 

 

人が変わること・バンドが変わらないこと - 羊文学「まばたき」を観て

 

最新作『きらめき』のレコ発として、初の東名阪ツアーである「まばたき」を行なった羊文学。そのファイナル公演が、2019年8月7日、渋谷CLUB QUATTROで行われた。

 

チケットはソールドアウト。超満員の会場で、整番が60番台だった僕はステージから3〜4列目の好ポジションに収まっていた。

 

羊文学は、今日に至るまでワンマンライブの会場の規模を着実に大きくしてきた。初めてのワンマンは2018年4月1日、下北沢BASEMENT BAR。『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』のリリース記念。その次は2018年8月20日代官山UNIT。こちらは『若者たちへ』のリリース記念だった。

 

 

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そして、2019年。羊文学は自身最大規模のワンマンを大成功させたのだ。

 

新旧織り交ぜられたセットリストに身を委ねながら、僕は色々なことを考えた。1年前に代官山で観た時に僕の周りにいた人たちはもう誰もいないし、ましてや下北沢の時とは状況が全く違っている。自分を取り巻く人間関係や環境は大きく変わり、あの頃の「僕」はもう遥か彼方へ去って行った、とさえ思う。それは悲しいことではなかったが、どこか寂しい気持ちがあるのも事実だった。

 

しかし、そこでふと気づいた。羊文学は変わらずに、ただそこにいてくれたことに。

 

いや、彼女たちだって、きっと変わっているはずだ。変わらない人間などいないし、ワンマンの会場が大きくなるごとに、バンドを取り巻く環境も大きく変化していったに違いない(事実、昨年3人は事務所を辞めたことを今回のMCで明かしていた)。それでも、「羊文学」というバンドとしてステージに立った時の彼女たちは、いつも通りなのだ。

 

特に、飄々とギターを弾き、時にはメンバーに笑顔を向けながら楽しそうにかき鳴らし、伸びやかで美しい歌声を聴かせ、かと思えばずっこけてしまうほどゆるいMCを飛ばしてくる、塩塚モエカという存在。どれだけ環境が変わっても、彼女を通して聴こえてくる歌はどこか憂いを帯びていて、しかし確実に美しく、儚い。僕はとても救われたような気持ちになった。

 

今回のライブの最後に披露されたのは、音源化されていない"生活"という曲だった。生活、と名のつく曲はたくさんあるが、その多くに共通して言えるのは、根底にある「生活の難しさ=日々の生きづらさ」から生まれる、ということだろう。その意味を深く噛み締めながら、3人に心からの拍手を送った。僕は今、幸せだ。

 

突き放しもしないが、寄り添ってくるわけでもない。ただそこにいてくれる羊文学に会いに行くために、僕はこの先もライブに通い続けるだろう。

 

(taku / おすしたべいこ)

 

 

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羊文学「まばたき」@渋谷CLUB QUATTRO 2019/08/07

1. あたらしいわたし
2. 天国
3. 絵日記
4. ロマンス
5. ドラマ
6. うねり
7. 夏のよう
8. 踊らない
9. 人間だった(新曲)
10. 若者たち
11. ハイウェイ(Intro long ver.)
12. ミルク
13. ソーダ
14. コーリング(Intro long ver.)
15. 涙の行方
16. 天気予報
17. 優しさについて

En1
18. Fix(※Hazel English cover
19. Step
20. 祈り(新曲)

En2
21.生活