ムジーク

勝手気ままに綴る音楽ブログ

Galileo Galilei『ハマナスの花』10周年に寄せて

 

2010年2月24日。今から10年前、Galileo Galileiのメジャー・デビュー作『ハマナスの花』がリリースされた。

 

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当時の僕は高校生で、ラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』を熱心に聴いており、Galileo Galileiが「閃光ライオット」の初代チャンピオンだということを知っていた。もっと言えば、僕が人生で初めて行ったライブで、人生で初めてこの目で観たバンドが、その日のオープニング・アクトとして出演していたメジャー・デビュー前のGalileo Galileiだった。2009年の出来事である。

 

(初めて行ったライブ「YOUNG FLAG 09」についてはここでも触れています。)

 

しかし、その時は彼らに特別な魅力を感じていたわけではなかった。尾崎雄貴がMCで素っ気なく言った「頑張りますのでよろしくお願いします」という当たり障りの無い一言だけが記憶に残り、その辺の普通のバンドだろうと片付けて、その日は終わった。

 

そんなバンドが翌年メジャー・デビューし、あのミュージック・ステーションに出演することになるとは。今思えば、僕の稚拙な想像力のせいでその思考に至らなかっただけであって、後の彼らの躍進を踏まえると「閃光ライオット」で彼らを見出した先見の明には感服するばかりだ。

 

2010年。話題になっていたこともあり、リリースされてすぐ『ハマナスの花』のCDを買った。それほど大きな期待はしていなかったが、リード曲となった同タイトルの"ハマナスの花"を聴いた僕は、彼らの音楽が自分にとって必要不可欠なものになることをはっきりと自覚することになった。

 


まず、曲全体に比べれば随分とヘヴィーなイントロがとにかく鮮烈だった。歪んだギター、スラップされるベース、ドシャドシャ降り注ぐドラム。この時点で早くもノックアウトされるのだが、あどけなさが残る歌声、無理矢理押し込めてはみ出しそうな歌詞など、聴けば聴くほど「青さ」が眩しく瑞々しい曲だ。

 

その「未完成こそが完成形」と言わんばかりの当時の彼らに、僕はただただ圧倒されてしまった。同世代のバンドが、心情をあからさまに吐露するような音楽を、ひたすらかき鳴らしている。うだつの上がらない日々をどうにか引き伸ばしていた普通の高校生の僕には、とても輝いて見えた。もっと言えば「憧れ」でもあった。

 

未完成とは言えども、これは後々理解出来たことだが、尾崎雄貴の詞世界はこの時点で凄まじい領域に達していた。北海道の道花であるハマナスになぞらえて、自分自身が成長していく物語を詰め込んだ"ハマナスの花"の歌詞は、10代そこそこで簡単に書けるような代物ではない。尾崎雄貴が投げかける言葉たちは、他のどんな音楽や文学よりも「正解」を導いているような気がしてならなかった。

 

世界は張り裂けて僕はここにいる
受け入れることは染まるのとは違うから("ハマナスの花")

 

僕らを赤裸々に表現したような嘘臭いリアルの映画や小説に
無力感と馬鹿らしさと共感を感じるんだ("ハマナスの花")

 

そう思ったのはきっと僕だけではないだろう。当時の僕には、宅録で音楽を作っている同じクラスの友人がいた。彼は僕が『ハマナスの花』を買ったことを知ると、貸してくれと頼んできた。自分と同年代のGalileo GalileiがMステに出演することを恨めしく思っていた彼は、曲の出来栄えを吟味してやろうと思ったらしい。その複雑な感情の奥底には「憧れ」や「共感」が強く渦巻いていたに違いない。

 

もちろん"ハマナスの花"だけが突出していたわけではなく、収録されたどの曲も僕にとってはかけがえのないものだった。

 

ハマナスの花』はミニアルバムだが、本当によく出来た作品だとつくづく思わされる。たった6曲、30分未満の長さながら、その密度はとにかく濃い。切実なロック・ナンバーである"Answer"、キーボードとゲスト・ヴォーカルで早くも新たな顔を覗かせた"フリーダム"、6分に迫るインスト・ナンバー"Ч・♂.P"(読み方は「アメラブ」)など、彼らのクリエイティヴィティはデビューの時点で密かに熱を帯び始めていたことが分かる。

 

 

彼らの凄さを半分も理解しないで、ただ「良い」と思って聴き狂っていた当時の自分のなんと贅沢なことか(それから数年後、2012年リリースの2ndアルバム『PORTAL』を聴いて、その完成度に僕は腰を抜かすことになる)。いや、それこそが音楽の原体験として正しいとも言えるのかもしれないが。

 

僕をここまでリアルタイムで射抜いた音楽は、後にも先にもGalileo Galileiだけだったと断言したい。 あれから10年が経ち、厳密に言えば彼らはもう「存在しない」のだが、Galileo Galileiの音楽は今でもハマナスの花のように色鮮やかに咲き誇り続けている。そしてそのことが、僕を生かし続けていることは言うまでもない。

 

あの花の色は決して忘れないから
色あせないよ("ハマナスの花")

 

デビュー10周年、おめでとうございます。

 

 

(taku / おすしたべいこ)